紙媒体とデータ どちらが安全?

今回は、紙媒体(印刷物)と電子媒体(データ)では、どちらの方がよりセキュアなのかを検討してみたいと思います。マイナンバー制度なども始まり、機密情報の管理に悩む企業も多いかもしれません。はじめに結論を言ってしまえば、もちろん明確な答えはありません。どちらが安全かはケース・バイ・ケースだからです。とはいえ、それぞれの強みと弱みを知っておくことは意味があります。特徴をよく理解し、賢く使い分けましょう。

1)紙媒体

ニュースではサイバー攻撃が話題になりますが、意外にも情報漏洩の6割以上は紙媒体からであるという統計があります。そもそも、情報漏洩は人的ミスが原因で起こることが多く、例えば、書類をカバンごと紛失したり、置き忘れたりすることで、新製品の情報や顧客情報が漏洩してしまうといったケースは想像に難くありません。紙媒体は、現代的な手法で暗号化できないので、書類を紛失したらどうしようもありません。また、バックアップが容易でないため、災害や盗難で情報が滅失するリスクが高いのも特長です。また、自動でアクセスログを残せないという問題もあります。

したがって、紙媒体の問題点は次の点です。

  • 暗号化できない
  • バックアップが容易でない
  • 監査が難しい

2)データ

データは容易に複製ができるため、所有者が気づかないうちに膨大な情報のコピーがインターネット経由で流出してしまうリスクがあります。また、持ち主自信が無意識にデータのコピーをさまざまな場所に残してしまうこともあります。例えば、ファイルをメールでやり取りすれば、お互いのメールサーバーにファイルの複製が残ります。添付ファイルをダウンロードした端末にも情報が残ります。ファイルを開けば、アプリが生成する一時ファイルやメモリのキャッシュファイルの中にも情報が残るかもしれません。

情報量にも注意が必要です。1MBのデータに20ページの情報が含まれているとしましょう。1GBだと2万ページに及びます。転送速度次第ですが、サイバー攻撃ではこれだけの情報をわずか数分で海外に持ち出される可能性もあります。

したがって、データの問題点は次の点です。

  • サイバー攻撃にさらされる
  • 複製が容易で管理が難しい
  • 一度に漏洩する情報が膨大

まとめ

あくまで一般論で個々のケースには当てはまらないかもしれませんが、次のように考えるのが良いと思います。利用頻度が低く持ち出す機会も少ないならサイバー攻撃に強い紙媒体のほうが安全な場合が多いです。ただし、機密書類は他と区別して鍵付きキャビネットや金庫などに保管しましょう。一方、利用頻度や持ち出す機会が多いなら、データの方が安全で利便性も高いと考えられます。なぜなら、暗号化やアクセス管理、バックアップが容易なためです。なお、「何でもとりあえず印刷する」、「とりあえずスキャンする」という人がいますが、管理が難しくなるのでやめましょう。印刷物やデータをみだりに増やさないことも大切です。なぜなら、複雑さはセキュリティの大敵だからです。